奥歯の入れ歯の種類とメリット・デメリットを紹介
奥歯は食べ物を食べたり会話したりする際に重要な役割を担っている歯ですが、奥歯を失った方の中には「奥歯で見えないから大丈夫」と放置している方もいるかもしれません。
しかし、奥歯のない状態を放置すると、全身に悪影響を及ぼす可能性もあります。
このコラムでは、奥歯の必要性や入れ歯の種類、入れ歯を入れるメリット・デメリットを紹介します。
奥歯の入れ歯治療を考えている方、失った奥歯の機能を補う治療について知りたい方はぜひ記事を最後までチェックしてみてください。
奥歯の役割とは
奥歯は、犬歯(前から3番目の歯)から後ろにある臼歯のことを指します。
奥歯の歯が抜けても「見えないから大丈夫」と治療を一旦放置しようとする方もいるでしょう。
しかし、奥歯は食べ物を噛み砕いたり正しい発音をしたりするために重要な役割を果たしています。
ここでは、奥歯の必要性や治療を放置するリスクなどについて詳しく紹介します。
奥歯の必要性
奥歯は、食べ物を細かく咀嚼する際に使われる歯です。
奥歯によって食べ物を咀嚼し、細かくすりつぶしてから消化器官に送ることで、消化・吸収しやすくなります。
奥歯が1本なくなるだけでも、食べ物をすりつぶす力が大幅に落ちることがわかっています。
また、奥歯は食べ物をすりつぶすだけでなく、発音にも影響を与える歯です。
奥歯がない状態だと、ラ行やイ段が発音しにくくなるといわれています。
さらに、奥歯の噛み合わせが悪いと、力が入りにくくなり、立ち上がる際や重い荷物を持ち上げる際にうまく力が入らない可能性があるでしょう。
奥歯がなくなって噛み合わせが悪くなったことにより、身体のバランスが崩れてしまい、肩こり・目の疲れ・腰痛などに繋がる可能性もあります。
奥歯が無くなったら放置するのはリスクがある
奥歯がないまま放置すると、下記のリスクがあります。
- 噛み合わせが悪くなる
- 虫歯になる
- 歯が抜ける
- 顔のバランスが変わる
- 胃腸に負担がかかる
- 肩こり・腰痛・頭痛が起こる
奥歯がなくなると残存する歯が移動するため、歯並びに変化が起こります。
虫歯になったり、残存する歯に負担がかかって抜けたりなどのリスクがあるでしょう。
また、噛み合わせのバランスが変わり、奥歯で噛むときに使っていた筋肉が使われなくなるため、頬の部分がたるむリスクもあります。
バランスが崩れると使われなくなる筋肉が出たり、反対に今までよりも過剰に負担のかかる筋肉が出てくることによって頭痛・腰痛など全身に悪影響を及ぼす可能性もあるでしょう。
そのため、奥歯を失った際に放置するのは危険なことといえます。
奥歯の入れ歯の種類
奥歯に入れる入れ歯には、複数の種類があります。
代表的な入れ歯の種類は、以下の7つです。
- ノンクラスプ義歯
- レジン床義歯
- シリコーン義歯
- リーゲルテレスコープ
- アタッチメント義歯
- コーヌスクローネ義歯
- インプラントオーバーデンチャー
ノンクラスプ義歯
ノンクラスプ義歯とは、留め具に金属を使わず、自然な見た目に仕上げた入れ歯のことです。
ノンとは「無い」、クラスプは「バネ」を意味しており、従来の入れ歯のように金属製のバネを使っていないのが特徴です。
金属の代わりに歯茎の色に似た樹脂を使っており、見た目が自然で入れ歯だと気づかれないような仕上がりになります。
重量も軽くフィット感も良好なため、入れ歯が安定しやすく、食べ物を噛む際に安定して噛みやすいというメリットがあります。
ただし、ノンクラスプ義歯は自由診療のため、完全自費で治療を受ける必要があります。
また、ノンクラスプ義歯に使われる樹脂は水分を吸収して徐々に劣化する特性があるため、2〜3年使うと緩くなるデメリットもあります。
レジン床義歯
レジン床義歯は、保険適応で治療できる一般的な入れ歯のことです。
レジン床義歯は基本的にプラスチックでできている入れ歯で、様々な口腔状態にも対応できます。
レジン床義歯の最大のメリットは、安価で作成できる点です。保険適用で治療できるため、他の義歯よりも安く作成できます。
一方でプラスチック樹脂でできている入れ歯のため、強度を高めるために一定の厚みが必要な点がデメリットといえます。
食事の際に温度を感じにくい、発音がしにくい、顔に違和感が出るなどの不満を感じる場合があるでしょう。
耐久性に優れているとは言い難い素材ではありますが、万が一壊れても修理や作り直しが比較的行いやすいため、扱いやすい入れ歯を求めている方におすすめです。
シリコーン義歯
シリコーン義歯は、歯肉と直接接着する部分にシリコーンを入れた入れ歯です。シリコーン義歯も、保険適用外のため、完全自費で治療する必要があります。
シリコーンは歯茎の形に合わせて変形するので、フィット感がある入れ歯です。
食事や会話の際にも外れにくく、安心して装着できます。
また、シリコーンがクッションのような役割を果たしているため、歯茎への圧力を軽減し、食事の際の痛みを和らげる働きもあります。
硬い食べ物も食べやすいため、食事を楽しみやすいでしょう。
一方で、使用し始めたばかりの頃は、入れ歯の厚みを感じ、口内に違和感を感じる場合があります。
さらに、シリコーン素材は汚れが付きやすいため、衛生管理も重要です。
長年使い続けると緩みが出てくるため、定期的に歯科医院でメンテナンスを行う必要があります。
シリコーン義歯は壊れた場合に修理が難しく、作り直すケースもある点に注意しましょう。
リーゲルテレスコープ
リーゲルテレスコープとは、ドイツ式入れ歯とも呼ばれるドイツ発祥の入れ歯です。
リーゲルはドイツ語で「かんぬき」を表しており、はめ込んだ入れ歯を鍵をかけるようにして固定します。
簡単に取り外しができますが、部品によって入れ歯と自分の歯がしっかり連結されるため、食事中に外れてしまうこともなく、しっかりと咀嚼できる点も特徴です。
リーゲルテレスコープで使われる部品は外から見えないため、他人から見て入れ歯をしていることがほぼわかりません。
また、外れにくい仕様のため、食事中や睡眠中の誤飲を防げる点も大きなメリットといえるでしょう。
一方で、リーゲルテレスコープは非常に制作難易度の高い治療のため、治療を受けられる歯科医院が少ないです。
入れ歯の製作やメンテナンスにも手間がかかり、治療費も比較的高額になる点にも注意しましょう。
アタッチメント義歯
アタッチメント義歯とは、磁石やシリコンなどで固定する入れ歯のことです。
見える部分に金属製のパーツを使わずに入れ歯を固定するため、他の人から見て入れ歯をしていることがわかりにくいというメリットがあります。
さらに、入れ歯がしっかり固定されやすく、ずれによる痛みを感じにくいため、食事や会話の際に違和感を感じることが少ないです。
アタッチメント義歯には「マグネットデンチャー」や「ミリングデンチャー」などの種類があります。
マグネットデンチャーは、残っている歯に金属、入れ歯に磁石を埋め込んで磁力で固定する方法です。
ミリングデンチャーは、差し歯に固定して使用します。入れ歯を支える歯から設計するため、噛み合わせの良い入れ歯を作ることが可能です。
アタッチメント義歯のデメリットは、自分の歯に磁石を埋め込むなどの処置が必要な点です。
また、保険適用外の治療のため、治療費が高くなる可能性があります。
コーヌスクローネ義歯
コーヌスクローネ義歯とは、自分の歯に金属の土台を付け、その形に適合する外冠を付けた入れ歯です。
歯に被せる内冠と入れ歯本体の外冠を2重に被せて固定します。
残っている歯と一緒に固定する仕組みのため、本当の歯のような使い心地で、食事や会話もしやすい点が特徴です。
また、コーヌスクローネは固定する歯に垂直に力がかかるような設計のため、残っている歯に負担がかかりにくい点もメリットといえます。
一方で、土台になる歯を削る必要がある点や、治療できる歯科医師が国内に少ない点などがデメリットとして挙げられます。
非常に高い技術力を必要とするため、治療代も高額になる傾向がある点に注意しましょう。
インプラントオーバーデンチャー
インプラントオーバーデンチャーとは、インプラントと入れ歯を組み合わせた治療方法です。
歯を失った部分にインプラントを挿入し、その上に部品を付けて入れ歯を取り付けます。
インプラントは歯茎に固定されているため、安定性があり、入れ歯の外れやすさや痛みが解消される点がメリットです。
インプラントオーバーデンチャーは、通常のインプラント治療より費用が安く済む傾向があります。
インプラント治療は、失った歯と同じ本数のインプラントを入れることが必要です。
一方でインプラントオーバーデンチャーは、上顎全体を入れ歯にする場合でも4〜6本埋め込むだけでよいため、費用や身体的な負担を少なくできます。
ただし、インプラントを入れ込む場合は外科手術が必要です。
また、インプラントを入れて定着してから入れ歯治療に移るため、通常の入れ歯治療よりも治療期間が長くなるデメリットもあります。
奥歯を入れ歯にするメリット
奥歯は食べ物の咀嚼や会話などで重要な役割を果たす歯です。
もしも奥歯が抜けてしまった際は、速やかに入れ歯を検討しましょう。
奥歯を入れ歯にするメリットは、次の3つです。
- 保険適用で入れ歯が作れる
- 適応範囲が広い
- 取り外し可能
それぞれのメリットについて、詳しく見ていきましょう。
保険適用で入れ歯が作れる
奥歯が抜けてしまったときは、保険適用で入れ歯が作れるケースがあります。
保険適応で奥歯を入れ歯にする場合は、歯茎部分がプラスチックでできているレジン床義歯で作成します。
ただし、レジン床義歯は見た目が不自然になったり咀嚼しにくかったりといったデメリットもあるため、よく検討しましょう。
適応範囲が広い
入れ歯治療は適応範囲が広い点もメリットです。
入れ歯の種類も複数に渡るため、自分の予算や重視したい点を考えながら治療法を選べます。
また、奥歯だけでなく、上下いずれか全ての歯を入れ歯にするなどの治療も可能です。
奥歯以外の歯に影響を与えずに入れ歯を入れる方法もあるため、リスクの少ない治療法ともいえます。
取り外し可能
奥歯の部分入れ歯は取り外し可能な点もメリットの1つです。
常に入れ歯を付ける必要がないため、口腔内を清潔に保ちやすいです。
入れ歯を付け始めたばかりの頃は、違和感を感じる場合があるため、徐々に付ける時間を長くするなどの対策もとれます。
奥歯を入れ歯にするデメリット
メリットの多い奥歯の入れ歯ですが、入れ歯を入れることによってデメリットを感じることもあります。
奥歯を入れ歯にする主なデメリットは、以下の3つです。
- 咀嚼力が弱くなる
- 違和感が生じる
- セルフケアが重要になる
それぞれのデメリットについて、詳しく見ていきましょう。
咀嚼力が弱くなる
入れ歯を装着すると、咀嚼力が弱くなるデメリットがあります。
保険適応のレジン床義歯は耐久性が高いとはいえず、咀嚼力が本当の歯の2〜3割程度まで落ちるともいわれています。
咀嚼力の高い入れ歯を付けたい場合は、自費でシリコーン義歯やアタッチメント義歯など、フィット感の高い入れ歯を選ぶとよいでしょう。
違和感が生じる
入れ歯を付けた際に、見た目や咀嚼時など、違和感が生じる可能性があります。
保険適応のレジン床義歯の場合、強度を出すためにプラスチック部分を厚くする必要があります。
そのため、食べ物の厚さを感じにくかったり、発音がしにくかったりといった違和感が生じる可能性があります。
セルフケアが重要になる
入れ歯を付ける際は、入れ歯本体や口内のセルフケアが重要です。
部分入れ歯を付けると、周りの歯に歯垢などが溜まりやすくなります。そのため、虫歯や歯周病のリスクが上がりやすいです。
毎日の歯磨きを徹底し、口内を清潔に保ちましょう。
まとめ
奥歯は、食べ物を咀嚼したり会話したりする際に重要な役割を果たしている歯です。
もしも奥歯を失ってしまった際は、早急に部分入れ歯を検討しましょう。
奥歯に適している入れ歯には、様々な種類があります。それぞれ費用やメリット・デメリット、手術の有無などが異なるため、自分に合った方法を選びましょう。
ラビット歯科では、入れ歯一筋20年の専門歯科技工士が、一人一人に合った入れ歯を作成しています。
入れ歯が初めての方におすすめのお試し義歯や、歯を抜いてすぐに入れられる即時義歯治療など、入れ歯治療に力を入れております。
お困りのことがあれば、ぜひお気軽にお越しください。