総入れ歯の種類はいくつある?注意点やメンテナンス方法も紹介
総入れ歯は、上下の歯どちらか、もしくは全ての歯を失った際に付ける入れ歯のことです。総入れ歯には複数の種類があり、予算や作成方法などから自分の症例に適したものを選ぶ必要があります。
しかし、どの種類を選べば良いかわからないという方も多いでしょう。このコラムでは、総入れ歯の種類別の特徴や注意点、メンテナンス方法を紹介します。
総入れ歯について気になっている方はぜひ最後まで記事をチェックしてみてください。
総入れ歯とは
総入れ歯とは、自分の歯が上下どちらか、もしくは全ての歯がなくなってしまった際に用いる入れ歯のことです。
歯茎の役割をする土台部分と、人工の歯が付いています。
総入れ歯を使用することで、見た目が改善するのはもちろん、食事や会話などがスムーズに行いやすくなる点がメリットです。
歯がない状態でいると、食事の際に咀嚼がうまくできなかったり、滑舌が悪くなったりといったデメリットがあります。
また、歯がない状態を放置すると、健康にも害があることがわかっています。
歯がないと咀嚼ができなくなり、噛まずに飲み込むことで胃や腸の負担が増え、体調の悪化に繋がる可能性があるのです。
さらに、咀嚼が減ることで脳へ与える刺激が少なくなり、認知症のリスクが上がることもわかっています。
総入れ歯の種類
総入れ歯は、素材や価格、保険適用の有無などで複数の種類に分けられます。
主な総入れ歯の種類は、以下の6つです。
- 保険適用の総入れ歯
- マグネットデンチャー
- 金属床義歯
- シリコン義歯
- 上下顎同時印象法の総入れ歯
- インプラント義歯
それぞれの特徴について、詳しく見ていきましょう。
保険適用の総入れ歯
保険適用の総入れ歯は、入れ歯の土台である床(しょう)や、人工歯に使われている材料が、レジンでできている入れ歯です。
保険適用の総入れ歯を作るメリットは、治療費を安く抑えられることです。
上下どちらか一方のみの総入れ歯を作る場合は、3,000〜15,000円程度で作成できます。
自費で総入れ歯を作ると数十万かかるケースもあるため、予算をかけずに治療を受けたい方におすすめです。
ただし、保険適用の総入れ歯を作る場合は、国が定めた素材や手順で作る必要があります。
そのため、一人一人にぴったり合った入れ歯を作るのが難しいというデメリットがあります。
口の構造にぴったり合うとは限らないため、食べ物を咀嚼した際に入れ歯が動いてしまい、痛みを感じるケースもあるでしょう。
また、どうしても外れやすくなってしまうため、定期的に通院して調整も必要です。
プラスチック素材のため、日常的に使うと段々と変色してすり減っていき、寿命は1〜2年程度と比較的短く、定期的に作り直しが必要になります。
マグネットデンチャー
マグネットデンチャーは、入れ歯の裏側に磁石を入れて、磁力で入れ歯を外れないようにする治療方法です。
歯が数本残っている場合、現存する歯を削って神経を取り、磁性キーパーと呼ばれる金属を取り付けます。
装着したい場所に置くだけで固定できるので、取り付けが簡単です。また磁石の力でしっかりと固定されるので、安定性があり、しっかり咀嚼して食べられます。
麻痺があって手を動かしにくい方でも着脱しやすい入れ歯です。
マグネットデンチャーは基本的には自由診療となるため、治療費用は完全自己負担になり、200,000〜600,000円ほどの費用が必要です。
また、マグネットデンチャーによる総入れ歯を作りたい場合は、歯が1本以上残っている必要があります。
歯が全くない方でどうしてもマグネットデンチャーを希望する場合は、インプラント治療と組み合わせる方法もあるため、歯科医院で相談してみてください。
また、歯に金属を入れるため、MRIやCT撮影の際に映像が不鮮明になる可能性があるため注意しましょう。
金属床義歯
金属床義歯とは、入れ歯の土台部分である床が金属でできている入れ歯です。
金属は、コバルト、チタン、金合金などの素材を使用します。
従来の入れ歯よりも丈夫で薄く作れることが特徴で、入れ歯を入れたときの違和感が少なく、話しやすい、咀嚼がしやすいなどのメリットがあります。
さらに、金属のため食べ物の温度が伝わりやすく、美味しく食事ができる点もメリットといえるでしょう。
金属床義歯も基本的に保険適用外の治療になるため、金額は全額自費負担です。
上下どちらか一方の総入れ歯を作る場合は、500,000〜700,000円程度の金額がかかります。
保険適用の入れ歯と比較すると値が張りますが、汚れも付きにくい素材のため、お手入れも簡単で、きちんとメンテナンスすれば数十年使えることもあります。
ただし、金属アレルギーの方は使えないケースもあるため、事前に医師との相談が必要です。
また、基本的には丈夫で壊れにくい素材ですが、壊れると修理が難しいなどのデメリットもあります。
シリコン義歯
シリコン義歯とは、入れ歯の内側にある歯茎と直接接する部分がシリコンで覆われている入れ歯です。
シリコンは粘膜への肌触りがよく、口内に入れても馴染みやすい特徴があります。また、弾力性があり、吸着力も高いため、装着した際にフィット感も感じられます。
食事をする際にはシリコンがクッションの役割をするため、歯茎が圧迫されず、痛みや不快感がなくなる点も特徴的です。
強い力で噛める上に外れにくいという点もメリットでしょう。
一方で、シリコン義歯は汚れが付きやすいというデメリットがあります。
メンテナンスを怠るとカンジダ菌などのカビや雑菌が繁殖しやすくなるため、衛生面に特に気をつけなければいけません。
さらに、シリコンが剥がれやすい点もデメリットです。
プラスチックの入れ歯にシリコンを貼り付けている作りのため、数年使っているとシリコンが剥がれやすくなります。
使い方にもよりますが、1〜5年程度でシリコンの張り替えや作り直す手間が必要です。
お手入れやメンテナンスの手間がかかる点に注意しましょう。
上下顎同時印象法の総入れ歯
上下顎同時印象法の総入れ歯は、上下の歯をまとめて型取りし、噛み合わせを含めてその人に合う入れ歯を作る治療法です。
上下一緒に型取りすることにより、噛み合わせはもちろん、舌を置くスペースや頬の内側の筋肉のスペースなど、口内のあらゆる作りを入れ歯に反映させられます。
この方法で入れ歯を作ると、咀嚼などの際に舌や頬を噛むことが少なくなります。
また、舌の動きを邪魔しないので、唾を飲んだり発音がしやすかったりといった点もメリットです。
一方で、丁寧に作業を行うため、入れ歯が出来上がるまでに時間がかかる可能性があります。
保険適用にもならないので、高額になりやすい点もデメリットといえるでしょう。
インプラント義歯
インプラント義歯とは、人工歯根であるインプラントを顎に2本〜6本程度埋め、それを土台にして人工歯を支える入れ歯です。
入れ歯の裏側とインプラントを連結するため、入れ歯をしっかりと固定できます。
インプラントを土台にする義歯は、通常の義歯と比べて余分な留め具をする必要がなく、留め具をかけるために歯を削る必要がありません。
また入れ歯がしっかりと固定されるため、食事をしっかり咀嚼でき、自分の歯で噛んでいるような感覚を味わえます。
ただし、インプラントを入れる際には外科手術が必要で、持病がある場合などはインプラントの手術が受けられない場合があります。
総入れ歯の注意点
総入れ歯を扱う際には、注意点を守らないと寿命が短くなったり、使い心地が悪くなったりする可能性があります。
総入れ歯を扱う際の注意点について3つ紹介します。
メンテナンスに手間がかかる
総入れ歯は、毎日メンテナンスする必要があります。人によっては手間がかかると感じる方もいるでしょう。
総入れ歯は、食事の際にも付けているため、本来の歯同様汚れが溜まります。
歯茎と隙間なく付けているつもりでも、食べかすなどが入り込んでしまうことがあります。
総入れ歯に付いた汚れを放置していると、変色したり口臭につながったりするため、毎日のメンテナンスが大切です。
見た目に問題が生じる可能性
総入れ歯は型取りをして作りますが、それでもぴったりと合わず、見た目に問題が生じる可能性があります。
入れ歯の素材や厚みが自然な仕上がりでない場合、見てすぐに入れ歯だとわかる状態になりやすいです。
特に保険適用の総入れ歯は、歯茎部分にレジンが使われており、厚みが出やすいです。
そのため、口元が盛り上がって見えることがあるでしょう。
また、使い続けることによって着色汚れが目立つようになり、自然な歯や歯茎に見えない可能性もあります。
定期的にメンテナンスを受けて、綺麗な状態を保てるようにしましょう。
咀嚼力が弱くなる
総入れ歯を装着すると、咀嚼力が弱くなります。
入れ歯は本来の歯の咀嚼力の20〜30%しか発揮できないともいわれており、食事の際に入れ歯が外れることもあります。
総入れ歯を装着した際は、1口大の大きさのものをよく噛んで食べることが大切です。
一度にたくさんの食べ物を口に入れると、噛みきれずに入れ歯が外れる心配があります。
特に入れ歯を付け始めたばかりの時期は、噛むことに慣れる必要があります。柔らかいものから練習し、徐々に硬いものを食べるようにしてみてください。
総入れ歯のメンテナンス方法
総入れ歯は、毎日清掃を行い、定期的にメンテナンスしなければいけません。
本物の歯と同様、きちんとケアしなければ歯垢が付着し、雑菌の繁殖やひどい口臭の原因になります。
また、カビが繁殖すると全身に影響を及ぼすこともあります。
ここでは、総入れ歯の正しいメンテナンス方法について紹介します。
1.入れ歯専用のブラシで洗う
総入れ歯は、入れ歯専用のブラシで洗いましょう。
市販の歯ブラシでも掃除はできますが、専用のブラシを使うとより磨きやすくなります。
専用のブラシは歯ブラシと同じナイロンの毛でできていますが、通常の歯ブラシよりも固く、頑固な汚れを落としやすいです。
また、柄も太く保ちやすいので、手に力が入りにくい方にも向いています。
2.スポンジやガーゼで柔らかい部分を洗う
入れ歯の柔らかい部分は、スポンジやガーゼで優しく洗いましょう。
歯肉に接する内面を強く磨きすぎると、フィット感が損なわれる可能性があります。
3.寝るときは水に入れて保管
入れ歯は乾燥すると劣化しやすくなるため、こまめに水やぬるま湯に入れておくことが大切です。
特にアクリル樹脂でできている部分は、乾燥するとひび割れたり変形したりする可能性があります。
入れ歯の形が変わると、フィット感が悪くなり、外れやすくなります。
特に就寝時は長時間入れ歯を放っておくことになるため、水に入れて保管する必要があります。
また3日に1回程度は入れ歯用の洗浄剤を使うのもおすすめです。
まとめ
総入れ歯は、上下どちらかまたは全ての歯がない場合に適用される入れ歯です。
総入れ歯は材質や作り方によっていくつかの種類から選べます。予算やメンテナンス方法などを確認し、自分に合った種類の入れ歯を選びましょう。
また、入れ歯は、日々のメンテナンスが大切です。
メンテナンスを怠ると見た目に問題が生じる上に、使い心地も悪くなるため、必ず毎日ケアするようにしてください。
ラビット歯科は、入れ歯の治療を得意とする歯科医院です。
院内に入れ歯一筋20年の専門歯科技工士が在籍しており、一人一人にぴったり合った使いやすい入れ歯治療を行っています。
送迎サービスや訪問診療などもありますので、入れ歯に関してお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。