歯科技工士 鈴木 俊男
技工士歴はどれくらいですか?
19年目です。
ラビット春日部には、いついますか?
院内に常駐しています。月~土(木曜休み)で、診療時間内はおります。
歯科技工士さんって、どんな仕事なのですか?
模型や歯型を預かって、データに照らし合わせて技工物を作っていく仕事です。
ラビット春日部は、歯科医院内に技工所がある珍しい歯科医院です。
技工士として直接の歯科の現場が見られるので、一番勉強になります。
先生の治療方針が直接聞けるので、この歯科医師と技工士が直結した労働環境は自分にとって恵まれている環境です。
院内技工(院内に歯科技工士さんがいて、被せ物などの技工物を作ることって少ないと聞いたのですが・・・
確かに、多くの歯科医院は、外部の技工所に技工物を出します。
ラビット歯科春日部は、外部の技工所に出さずに院内で生産が出来ます。
そのため技工物が院内で完結、スピード提供が出来ます。
「セレック」も稼働し、被せ物、詰め物の提供もできるようになりました。
「セレック」とは3Dで技工物を加工する機械ですか?それは、技工士さんにとって脅威ですか?進歩なんですか?
率直に言うならば・・・技工士のビジョンは、もともと「頭」と「手」を使って作っていた技術の世界です。
そこに生きがいを感じる人にとっては、デジタルの登場というのは怖い存在だと思います。
ただ、視点を変えると・・・精密な製作工程・規定工程は機械に助けてもらい、診断や設計・規定工程にはまらない部分は、技工士の今までの知識や経験が活かせます。
私は、アナログ技工が身体にしみ込んだ熟練者が、デジタルを使い自分の経験を技工物に上乗せする事ができたら、それはステップアップの技法の1つとも捉えられるのかなと思います。
ちょっと前なのですが、顕微鏡を通してみた技工物の表面の写真・・セレックと、技工士さんが作った写真を見たことがあるのです。 セレックは線(筋)が付いているけれど、一方、技工士さんの技工物はツルツルだったんです。 これって、機械の限界なのでしょうか?人間の方が優れているという事なのでしょうか?
数値化が出来るところは、機械が忠実に再現できます。
コンディション等は関係なく、コンスタントに仕上げられるので、優れていると思います。
一方で、数値化が出来ないところは人が仕上げる、そのような二者の住み分けだと思います。
技工物は、機械で作ったとしても人の手を掛けないと完成には至らないと思います。
筋がついてしまった被せ物は、例えると「目の細かい紙やすり」に近いので、歯をギリギリやった時に向かいの歯を傷つけてしまうことになります。
ツルツルに仕上げてあげることも、技工士の役割です。
機械は「脅威」ではあるけれど、うまく使えば「便利な道具」ということでしょうか?
そうですね。
今までの製造技術で作れなかったものが、作れるようになります。
具体的には、ジルコニアという固い物質があるのですが、鋳造(ちゅうぞう)では作れません。
セレックで削り出して、窯で焼き上げて仕上げる工程になります。
いずれにせよ、デジタルとアナログとどちらも使って、最後は人間が仕上げる形になります。
セレックで口腔内をスキャン・・ということは、印象(いんしょう:歯型を取る粘土の事)を取らなくていい?
お口に印象材を入れると「オエッ」となっちゃう人、お口の中がいっぱいになっちゃう感じが苦手だという方が多くいらっしゃいます。
でも、口腔内スキャナーなら解決できます。
患者様で「歯医者さん怖いな・・」と思う理由の一つに「歯型を取ること」があると思うのですが、そう感じる人にとってはメリットだと思います。
朝、口腔内をカメラでスキャニングして、夕方に来たら被せ物・詰め物をセットできる「1Day(1日)被せ物・詰め物」も可能ということですね?
そうですね。
技工士が院内にいて、詰め物や被せ物を仕上げて、最後にセットするまで見届ける歯科医院はあまりないと思います。
院内での技工士の存在価値は、そこにあると思います。
今度は入れ歯について伺いたいのですが、「入れ歯」治療で院内技工士さんが院内に常駐する意義は?
被せ物と詰め物は、「固い歯」に対して「固い詰め物や被せ物」が入るので、模型上で比較的装着具合は確認しやすいです。
しかし、入れ歯は「柔らかくて動く粘膜」の上での「固い入れ歯」の落ち着き方を確認しなくてはなりません。
外注ラボだと、患者様の歯型が届いて「固い石膏の模型」の上で「固い入れ歯」を作るというプロセスでした。
「口の中で、どういう風に粘膜が動いて、入れ歯が落ち着くのか?機能するのか?」というのは読めないところで、想像するしかありませんでした。
院内技工なら、自分の目で確認できるので得られる情報量はとても多く、良い品質で提供できるのではないかと思います。
技工士さんは、作った入れ歯を模型の上で「どうかなどうかな?」とやっているんですね。模型と実際の人間の粘膜の上では相当ギャップがありますよね。だから、セットの時に「入れ歯が合わない」という事が多いのですね。
そうですね・・・あってはならないのですが、起きてしまうことは事実です。
これに関しては、わたくしたち技工士の石膏模型の診断が重要なのです。
患者様のお口の情報を、石膏模型から経験と知識で読み取り、読み取れない部分は先生からお聞きして模型に乗せていきます。
そこが「匠の世界」ですね。
はい、そのためにも先生の義歯(ぎし:入れ歯のこと)に対しての考え方に、技工士も同じ知識量でいる事が必要だと考えています。
院内で印象材(歯型を取る粘土のようなもの)を練って、口にセットして、石膏を注いで技工士さんに渡すと、夏と冬、また湿度や温度で誤差が出るという話を聞いたのですが・・。
印象材が固まったときの温度に合わせた水温で石膏模型を作ると、誤差が少なくなります。また、湿度も合わせるといいそうです。
それと、時間が経つと印象材が変形するので、石膏は時間を空けずに注ぐ事が誤差を少なくするポイントです。
院内で鈴木さんがやってくれると、精度が違うんじゃないかなと期待しているんですが。
実際に小さい積み重ねが口腔内でセットするときの誤差を生んでくるので、それを少しでも無くすよう心掛けています。
入れ歯をしている人は「何か当たる」が悩み、でも「何度も相談するの悪いわ」って思ってしまうという話をよく聞くのですが・・・。「違和感がある」という段階で来ていいんですか?
もちろんです、調整もおまかせください。
先生と一緒に、技工士が直接患者様の横に立てる環境が出来た事は素晴らしい事なんですね。
今、自費で超精密義歯・・・歯ぐきも本物にしか見えない「次世代入れ歯」があるそうですが、どうなんでしょうか?
良いと思います、歯ぐきの色を見て血管とかも作ります。
材質的には悪くないと思います。
もともとの入れ歯の素材に色素のある材料を混ぜて作っていくので、材料的には大丈夫です。
ご要望があれば対応できます。
院長のビジョンとして「1DAY(ワンデイ)入れ歯」を実現したいという事なのですが、どうでしょう?
1日(ワンデイ)で入れ歯を作るのは、今の技術で実現可能です。
歯科医師がその日1日その患者さま専属になります。
朝から治療をはじめて、型を取って、高さを決めて、模型を作って、歯を並べて、仮の形が出来たら一回合わせて、仕上げる流れになります。
その間、患者様にお付き合いいただく時間は長くなりますが、院内で完結します。
出来上がった入れ歯は、セットしてから使い込んでゆくので、そこから患者様とラビット歯科春日部のお付き合いが始まります。
ご来院の際は、私も同席させていただければと思っています。
1日1つ、上下、おひとりさま限定ですね。
被せ物の1日(ワンデイ)提供の延長線上で、何回も来院していただくより1回の来院で提供出来れば、入れ歯に1日も早く慣れる事ができ、貴重な患者様の時間を奪わないで済みます。
ところで鈴木さんご自身の事を伺いたいのですが、なぜ技工士を志したのですか?
小さい頃から修理する事が好きで、修理をすると物の本質が分かると考えていました。
これが活かせる仕事が「歯科技工士だ」と思ったからです。
突き詰めるタイプですか?
そうですね。
趣味でカメラをいじるんですけれど、今どきデジタルカメラをやればいいのにマニュアルカメラの機械的な構造を理解しないと気が済まないんです。(笑)
入れ歯を作るにあたっても「口の中はどうなっているのかな?」というところからスタートです。何かお困りの事がありましたらお気軽にご相談下さい。
インタビュー:2020/8/19(更新)