院長 吉田 覚
歯医者さんになるきっかけを教えて下さい。
父が大学で歯学部で教えていました。
大学の歯学部入って卒業後、大学院で解剖学の勉強をしました。
実は、教師になりたかったので、解剖学、つまり基礎のところから学んでいたのです。
でも、並行して歯医者さんでも働いていたら、そちらのほうが面白くなってきたのです。
ですので、教えるのではなく、現場を選びました。
ラビット歯科では、訪問歯科をやっていると聞きましたが、訪問歯科ってなんですか?
家の都合・身体的都合で歯医者さんに来れない人たちは、世の中にはたくさんいます。
口腔内(口の中)の病気・痛みに対して我々が赴いて治療するのが、訪問歯科です。
あまりご存じない方だと、「歯医者さんがうちに来て一体どこまでやってくれるんだろう?」と思いますよね。
医療法人立靖会では、院内の診療と同じ治療が出来るのです。
全部、普通にできます。
インプラントも在宅で出来るんですか?
滅菌しないといけないので、一般の家庭ではできません。
診断書を出して、大学病院をご紹介します。
大きな機械やCTは持っていけませんので。
「機械持ってこられても、ウチ狭くて入るかどうか?心配だわ」と思っている方もいると思うのですが。
道具は、歯医者さん自体が多くの道具を使うのでそれなりの量になります。
歯を削る道具は昔かなり大きかったんですけど、今はミシンケースぐらいの大きさです。
ベッドの脇に人が1人入れるスペースが有れば、何とかなります。
肢体不自由(動けない、寝たきり)の方もいらっしゃいます。
その場合、ベッドの位置などによって診療がとても大変なときもあります。
初めて訪問歯科に来てもらったという患者さんは、お口の環境はかなり悪い状況からスタートします。
まず、入れ歯があっていないということが多いですね。
あとは、毎日のブラッシングができていないが通常です。
そこからスタートです。
まず「これは普通の状態じゃない、悪い状態だ」ということを分かっていただいて入れ歯を調整して、毎日の口腔ケアができる体制を整えてあげるといいことがあるんです。
まず「食事がおいしくなった」「食べられるものが増えた」と。
もちろん「見た目が良くなった」という話もよく聞きます。
口元ってことですか?
そうです、口元です。
それで感激される事が多いです。
具体的に、何が食べられるようになったのでしょう?
今まで、入れ歯が全く合ってなくってしばらく使っていなかったから、お粥みたいなものしか食べられなかったのが お肉も食べられるし、おせんべいも食べられるし、というところまでもっていくことも可能です。
訪問歯科に来てもらう前は、誰に歯磨きしてもらっているんでしょうか?
本人が出来ない場合は、周りの人に頼るしかないですね。
周りのキーパーソン(介護に関しての決定権者)になる方がいて、その方の意識によります。
ケアマネージャーさんが口腔ケアに関心がないと、あまりやりません。
家族の方が関心があれば、やっている場合もあります。
それでもやはり「他人の口の中を歯ブラシする」ということに、そもそも慣れていらっしゃらないのでキーパーソンさんにまず歯ブラシの仕方を教えるとかそういったところから始めます。
キーパーソンって、ケアマネージャーさんとかお嫁さんとかですか?
お嫁さんとは限りません。
だいたい1人暮らしのご老人が多いので、娘息子は遠くに住んでいるので、ケアマネージャーさんからの訪問歯科のご紹介が多いです。
ケアマネージャーさんは訪問歯科って知ってますか?
もうだいたいご存知ですね。
先生も訪問歯科に行かれるのですか?
今のところその予定はありません。
訪問は専門の部隊がいます。
私は主に、外来を診ます。
外来の無料送迎もあるんです。
え?!外来に来るのに無料送迎があるんですか?!条件はあるのですか?
健脚で歩いてこられる方が呼べるわけではありません。
移動するのに不自由だけど介護の認定がないとか、
訪問歯科を受けるまでではないけど、院内の整った環境で楽な体制で治療を受けたい方は対象になります。
高齢の方がメインになります。
外来で来れる患者さんと、訪問で診る患者さんの間には、今までミゾがあったんですよ。
そこを埋めるためのサービスです。
電話でお願いすればいいですか?
はい。時間と日取りを決めてお迎えに上がります。
現場のニーズから生まれたサービスですか?
実は、訪問で伺っているのおうちの方からのニーズが大きいんです。
「家が狭いから」と気にされる方が多いんですね。
「散らかっているから気が引ける」という方もいるんですね。
そういうところから、無料送迎が始まりました。
もし外来に通えなくなって訪問歯科に移行したとしても、通院していただいていた時のデータがありますし、どんな方かもお互いに分かって、お互いに安心することが出来ます。
「知っている先生に来てもらうんだったら、うちの中に入ってもらっても抵抗ないわ」と思いますよね。
ホントに「知ってる先生に」というところが大きいですよね。
子供から動けないご老人まで、全員に対応できるような医院を目指しています。
特定の診療(インプラントなど)に特化しないで、「当たり前の治療が皆さんに当たり前にできる歯医者さん」になれるよう、我々頑張っています。
無料送迎に関しては、採算は度外視ですね(笑)。
「自分で通院できない」などの理由で治療を受けられない人を、少しでも減らしたいのです。
「迎えに行きますので、是非いい治療を受けてください」ということです。
「噛めることで健康になれる」ってことは、まだ知られていないですよね。
そうなんですよね。
お口の中で「困ったこと」があっても、どうしたらいいのか答えが見つからないという方がいっぱいいらっしゃるのでその答えをドンドン出してあげたいです。
訪問歯科は、ほとんど入れ歯ですか?
治療方針(入れ歯にする)から治療が始まるのではなく、「困ったこと」の解決をしていくのです。
「困ったこと=主訴」(しゅそ:患者が医者に申し立てる症状のうちの、主要なもの)があって、それを「解決」するために「提案」をします。
具体的に「主訴」とは、歯がグラグラしている、かぶせ物が取れたなどです。
だから「どうしてほしい」とまでは患者さんは言わないです。
「グラグラしているから、取れたから、何とかしてくれ」に我々は応えます。
答えをいくつも持っています。
「Aさんの場合だったら、このパターンはいかがでしょうか?」
「Bさんだったら、これはいかがでしょう?」
人それぞれの治療の仕方があります。
例えば、胃ろうの人に、歯がないからインプラントは入れませんよね。
私の担当した患者さんで、胃ろうなんですけど、入れ歯が痛くて入れられない方がいました。
そもそも口からお食事はしてないんですけど、ないと見た目が良くないんですね。
その方は、寝たきりなんですけど、意識がしっかりして身なりもしっかりとしたおばあちゃんだったんです。
「ご飯を食べるためだけの入れ歯」ではなく、「見た目のための入れ歯」も大事です。
その方に入れ歯を入れたときは、すごく喜んでいただけました。
いつも以上に形にこだわって、何回も試し付けして。
歯の形も「もうちょっと丸いほうがいい」とか。
昔の写真見せてもらって、入れ歯を作りました。
究極の若返りですね。いいですね!その昔話から歯に関係ない話にもなります?
患者さんとの距離感が近くなってくるほど、話す内容もかなりディープになってきます。
そうすると「今度、孫の結婚式があるからそれまでに直してほしい」とリクエストがでる。
ですので、こちらは「前歯のココが気になるから、本当は奥歯からやるんだけど、気になるなら前歯を先にやっちゃおうね」
とか、そんなやり取りも生まれます。
生活とか人生のスケジュールの合わせてくれるんですね。
3日後に結婚式だから入れ歯作ってくれって言われたが事がありました。
さすがに3日後は無理ですけどね。(笑)
そういう人生の節目に関われるのは、楽しいですし。
楽しいんですか?
そうですね。
お話しするの僕、大好きなんで。
そういうのを聞くと、歯のこと以外聞いちゃいけないんじゃないか?って思ってしまうんですが、安心しました。
「治療」は「主訴」から始まるんです。
「痛い」だけが「主訴」じゃないです。
入れ歯の場合、女性の方だと見えるところに金属の引っ掛かりが見えてしまうことに、かなりの抵抗を持っていますから、よく相談を受けます。
そういう相談にも乗ってもらえる?
もちろんもちろん。
入れ歯って、何回も調整するんですよね?
定期的な調整は絶対ですね。
引っかかりの金具は金属ですので、取り外し取り外しを何度もすると、どんどんゆるくなってくる。
入れ歯に使われている歯は、プラスチック製のものですので、噛む力によって擦れてくるのです。
噛みグセで右だけが擦れたり、左だけが擦れたりすると、どんどん違和感が出てくる。
ついには痛くなる。
「作って調整して終り」ではないのですね。
絶対ないですね。
よく私、入れ歯は靴(くつ)と同じだと言うんです。
新しい靴を履いたとき、靴ずれがおこりますよね。
なるべく合うように調整はします。
でも、使っていけば、どうしても擦れてきます。
古い靴を、履き続けると、傾斜してゆがんできます。
そうすると、体に無理がきます。
なるほど、すごい分かりやすいです!
ありがとうございます。
ところで、ユニットにとてもこだわられたそうで・・・。
先ほど横になりましたが、テンピュールみたいにスッと吸い付いてくる感じで。
そうなんです。
私がいた医院で使っていたものです。
いろんな会社のユニット見ましたけど、やはりこれが一番ですね。
今まだ使っていないんで硬いんですけど、使っているうちに軟らかくなってきます。
寝心地とデザインの他、おススメポイントはありますか?
頭とかも包まれる感じで、頭が固定されていて患者さんも楽なんですよね。
平らなビニール製の固いやつだと、首が疲れてしまう。
さらに患者さんは、ずっと口を開けていることになりますので、肩が凝ってしまう。
少しでも緊張を和らげるように、軟らかくて包み込まれるようなものにしました。
治療もやりすい?
患者さんが楽にしていて、そのおかげで口も開けやすくなるという意味ではやりやすいです。
診療中、寝てくれる患者さんがいるんですよ。
本当は困るんですけど、口が閉じてきちゃうんで。
寝ると、口って閉じるんですか?
閉じちゃうんです。
半開きくらいまで。
開く筋肉と閉じる筋肉がつりあうので、半開きになるんですね。
でも「寝てもらえる」ということは安心されているし、体も楽な状態ということなのですよね。
「ストレスなく受けてくれているんだな」「リラックスしているんだな」「信頼してくれているんだな」とこちらも安心します。
リラックスした環境を作れる、1つのアイテム(道具)としてこの「フカフカ」にしたかったんですね。
どこに案内されても、全部のこのユニット(診察台)なんですか?
全部です。
どこに案内されてもこの「フカフカ」感が。
そうです。
色ぐらい変えようかと思ったんですが、落ち着ついたベージュ色にしました。
外来のことでお伺いしますが、どんな医院さんを目指しているのですか?
小さいお子さんから、おじいちゃんおばあちゃんまで来てもらうことが、目標です。
私も6ヶ月の子がいますので安心して下さい。
子供を嫌がる先生が多いと思うんですが。
歯医者さんに初めてくる子供は、ものすごいストレスを抱えてきますのでものすごく我慢強い子でもいきなり「痛い治療」は、まずしません。
まず、慣れてもらいます。
やり方として「オリエンテーション」というのが教科書的にあるんです。
まず、診察台に座ってもらうところから始めます。
一人じゃ座れないので、お母さんに抱っこしてもらって、倒れて横になる。
お口を見せてもらう、覗き込む。触らしてもらう。
本当に徐々に刺激を与えて、それに慣れてもらう。
それを繰り返すことによって、治療に対して抵抗なくやってもらえるようになれば成功しやすいですし、治療のクオリティも上がります。
昔の歯医者さんは、ガッって開けて、バッと治療していました。
数十年前にそういう治療をされた患者さん、つまり今のお父さんお母さんは、歯医者さんに来るのが、もの凄く抵抗がある。
(40代のインタビュアー手を上げる)今のお母さん達の世代ですよね。その気持ちが、子供にも伝播する。
伝播しちゃうんですね、コレが。
保護者の方には大変かもしれないんですが、何回も通ってもらって、長い目で見て「定期的にお口の中を管理できる大人になってもらう」ためにも、まずそのベース(基礎)になるところからやっていただく。
「その場で治療が終わればいい」ではないのです。
その「1個の虫歯」が治ったあと、歯周病のリスクもあります。
虫歯の治療を怖がっていたら何も出来ないですからね。
メンタル(精神)面からも、子供をサポートしたいと思います。
歯医者っていつから行っていいんですか?
症状がなくても、気になること・質問したいことがあったらその時から歯医者さんに行っていいんですよ。
歯のことに限らず、例えばアゴのことだとか、イビキのことだとか。
赤ちゃんでもイビキかきますから。
そうなんですか?
かきますかきます。
気になるようなら、赤ちゃんだろうがなんだろうが、来ていただく。
「相談に乗る」っていうのが、そもそもの「診療」ですから。
「相談に乗る」が「診療」なんですか?「治療(ちりょう)」が「診療(しんりょう)」だと思っていました。
いやいやいやいや。
それだったら、内科の先生のやっているのは、治療じゃないのか?
いや、そうじゃないですよね。
先生は問診をしっかりして、適切なお薬を出すのが内科の先生のお仕事、「診療」ですよね。
何でも聞きに来てください。相談しましょう。
ああ、なんて心強い。1歳でも安心して連れて来られます。
自分も6ヶ月の子どもがいるので、大丈夫ですよ。
「相談」が「主訴(しゅそ:患者が医者に申し立てる症状のうちの、主要なもの)」でいいんですね。
「困った時点」で「主訴」ですから。
「気になった時点」で「主訴」なんですね。
例えば「頭が痛い」が歯のせいだということもあります。
「肩こり」が歯医者で治ることもあります。
どんな医院さんにしていきたいですか?
「誰もが抵抗感がなく通える」歯医者さんにしたいです。
例えば女性とか数ヶ月に一回髪を切るじゃないですか?
何年も同じ美容院に行ったほうが気が楽だし、髪型や髪質もわかってくれていますよね。
それくらいのアットホーム気分で来てもらえるような、医院にしたいです。
「行きつけの美容院」ならぬ、「行きつけの歯医者さん」。
そうですね。
「困ったから行く」のではなく、今、予防の時代ですから「定期的に行く」のは絶対大事ですから。
それに私のやろうとしていることは、ホワイトニングです。
女性は特にそうなんですが、お口の中のレベルアップを図るためには、「自分がやってよかったな」ということが如実にわかるようなことが大事です。
「歯を大切にしていきたいな」と思えるような環境づくりのためには、ホワイトニングが有効だと私は思っています。
ホワイトニングも一回やったらずっと白いわけではないので、定期的に来て状態の維持をしますよね。
更にクオリティをあげていく。
そういった形で、気軽に相談に来てもらいたいです。
まあ、ホワイトニングはあくまでも例ですけどね。
歯並びにしても矯正の先生もいますし、かぶせ物で何とかすることもできますし。
全部ここで相談できるようにします。
専門の先生にお願いする場合は、ご紹介します。
赤ちゃんからおじいちゃんおばあちゃんまで、ここにくれば、矯正もホワイトニングまでしてくれる。しかも「いけない」「行けるかなあ?」という人までサポートしてくれるんですね。
至れり尽くせりですね。マーケティングとしては、素晴らしいですね。
ほんとに気軽に相談しに来て欲しいです。
いきなり、歯を削ったりしませんから。
自分の親もお願いする気になります。娘息子のいうことは聞かないですけど、先生の言うことは聞きますからね。
ありますあります、よくあります。
「先生、おじいちゃんのこと、怒ってください」って言われます(笑)。
身内の言うことは聞かないんですよね。
「先生に怒られないように頑張ります」ってお年寄りに言われます(笑)。
ちなみに、このライトも鏡がついているんですよ。
診療している様子が、患者さんからも見えるようになっています。
本当に気軽に来てもらえるための仕掛けがありますので、ぜひ一度体感しに来てください。
院長先生に訪問歯科や無料送迎をしてもらえる条件を伺いました。
私は訪問歯科に来てもらえるの?
1.介護認定を受けていれば対象になります。
介護保険が使えます。
総合的にマネージメントしなくてはいけないので、ケアマネージャーさんや当院にご相談下さい。
ご依頼を頂き、お話に伺って「月いくらくらいになります」という見積もりを出します。
2.お口の中が問題がないかどうか心配な方も、対象になります。
例えば「私は本当にちゃんと食べられているのか?」「入れ歯は本当にあっているのか?」を診に行くだけでもいいのです。
【先生からメッセージ】
実際に「歯が抜けた」「グラグラだから診てほしい」ということで行くと、歯が抜けたことが一番の問題でなく「そもそも入れ歯があってない」「口腔ケアができてない」など、もっと大きな問題があることが背景にあるのです。
患者さんは、自分が困ったことにを一番訴えます。
それをキッカケに、背景にある大きな問題に気付くのです。
ですので、確認のため・安心のために訪問歯科診療を受けられるのは、絶対良いと思います。
特に訪問を受けられる方は、定期的に歯医者に通うなんてことは絶対できないので、絶対一度診た方がいいと思います。
行く度に、必ず何か問題を発見します。
主訴は「痛い」だけではありません。
「痛くないから呼べない」ではないです。
「合ってるかしら?」「ちゃんとできているかしら?」という「心配を解決する」ことも「治療」です。
3~4年歯医者さんに行っていない人だと、確実に何か問題があります。
ぜひお口の中に対しての関心を、もっと持ってほしいです。
そのためのサポートをすることは、我々の任務です。
地域の歯医者としても、啓蒙活動は責務だと思っています。
費用に関しては、訪問歯科は、で決められた金額で行います。
「訪問に行く」という行為に対しては、数百円くらいです。
【私は無料送迎にしてもらえるの?】
1.歩くのが困難でなら対象になります。
2.今、近くの歯医者さんにいけるんだけど、階段があるので行きずらい場合も対象になります。
【先生からメッセージ】
行くことに対して何かしらのハードルがあると、「今日、行くのやめようかしら?」と思ってしまいます。
それが積み重なって1~2年あっという間に経ってしまいます。
そもそも歯科医院に「行く」ということだけに抵抗感がある時点で、長い目でお口を良い状態にコントロールする・ケアし続けていく、
モチベーション(動機付け)を維持するということがかなり困難になってきますので
普通に通院されることに対して、少しでもストレス・障害を無くしていけるような環境を私たちは整えているつもりです。
もし、通院に対して不安を抱えているようであれば、ぜひ一度ご相談下さい。
また、当院は完全バリアフリーです。
患者さんを、車椅子の方をユニットに移すことも可能です。
どういう体制でやるのが一番いいかを、ケアマネージャーさんと相談しながらすすめます。