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歯科医の視界①:銀の詰め物の中は・・

2024.05.31

早速ながら連投で、

春日部ラビット歯科院長の吉田です。

 

第一回目の症例は、

数年前に保険診療で入れた銀の詰め物の治療です。

 

60代女性

主訴:「5年ほど前にやった右下奥歯の銀の詰め物を治したい。特に痛みやしみたりはしない。」

ここでいきなり知ってもらいたいポイントですが、

「特に痛み等の症状はない。」

ということ、覚えておいてください。

 

患者さん目線

写真上の左上、一番奥歯にある銀の詰め物の治療になります。

 

何度も言いますが、

痛みや冷たいもので沁みるなどの症状はありません。

 

初診時に撮ったレントゲン写真

歯医者さんに行くとまず↑こんなレントゲン撮りますよね。

これは歯科ではよく「パノラマ」と言われるものですが、

歯科医師はこの写真一枚で、多くの情報を得ることができます。

レントゲン説明し出したらキリがありませんのでまた今度として、

今回注目するのは写真上で左側です。

 

パノラマ写真の左側部分を拡大

初診時に赤丸の部分の虫歯を説明してます。

 

金属の詰め物、被せ物は真っ白に映りますが、

その下の部分がわずかに黒くなっていることがわかるでしょうか?

そこが虫歯です。

詰め物や被せ物の隙間からできる虫歯は

『2次う蝕』

と呼ばれます。

 

それでは、実際の治療の過程を写真で見ていきましょう。

 

拡大鏡をつけた歯科医師の術中の視界

銀の詰め物の縁(ヘリ)に段差が生じているのがわかりますか?

こういった段差は、長期間使用した詰め物によくある段差です。

こういった段差は、虫歯菌たちにとっては格好の住処になります。

 

ではそんなズレてしまった詰め物取り除いてみましょう。

  

銀の詰め物を取り除いた直後

ほとんどの患者さんが、このような写真を見せられてびっくりされてます。

   

縁(へり)の部分から黒ずみが入り込んでおり、

手前の白い歯との間ではより色濃くなっていますよね。

この黒いところの正体は・・

 

ほぼ全てカビです。

 

手前の歯の間にある白い塊は、

溜まっていた汚れ(プラーク、歯垢)です。

 

ショックですよね。

でも、ほとんどのケースでこの状態なんです。

 

銀の詰め物は接着剤で歯とくっつけていますが、

この接着剤の劣化によってカビが入り込みやすくなります。 

 

ではこの劣化した接着剤を取り除いてみましょう。

  

劣化した接着剤を取り除いた状態

手前の鳩の間の部分が濃い茶色になっています。

この部分は触ると甘栗のような感触なのですが、

これが虫歯です。

 

そのほかにも、

中心部には黒い亀裂のようなものがありますね。

これも虫歯です。

 

更に、手前の歯との間の歯肉から出血しています。

歯肉の慢性的な清掃不良から炎症を起こしています。

絆創膏を1、2週間もずっと貼っていたらカブれますよね?

それと同じような状態です。

 

それではその虫歯を取り除きます。

その上で取り残しがないか、

虫歯を染め出す「カリエスチェッカー」という薬剤を使用しました。

 

大まかに虫歯を取り除き、染色液で最終確認

まだところどころ虫歯がありますね。

カリエスチェッカーはあえて目立つ青を使ってますが、

裸眼では写真のような大きでは見えません。

春日部ラビット歯科では、歯科医師と歯科衛生士は

歯科専用拡大鏡を使用しています。

 

健全な部分を残しつつ、

染め出された虫歯の部分を更に丁寧に取り除き、

詰め物の型取りに適した形作りをします。

「窩洞形成」

といいます。

 

型取りに適した形(窩洞形成:かどうけいせい))終了

「茶色くなっているところも虫歯では?」と、思うかも知れません。

ここは虫歯によって歯が反応した層で感染はしていません。

直すことができる部分として学会でも極力残すことを推奨されています。

 

余談ですが、

このブログ書いていて、

「そういえば、この部分名前あんの?」と疑問に思ったので、

私の恩師であり、尊敬する先輩でもあり、

「お砂糖博士®︎」として活躍中の新美寿英先生に聞いてみたところ、

「先駆菌層におけるう蝕象牙質内装」

とだそうです。

即答。すげえ。勉強不足ですいません。精進します。

 

窩洞形成は詰め物の材質によってその形が異なります。

今回は患者さん本人がセラミックを希望されたのでこの形です。

セラミックの窩洞形成は、カドの無い丸みを帯びた形成が必要です。

逆に、一般的な金属の詰め物の場合は、角ばった形に整えます。

 

ここまで形成したら再発予防処置を施します。

当院では殺菌消毒した後に「ナノシール」という薬剤を使用します。

 

虫歯の再発予防処置後

窩洞形成を行うと、健全な部分が丸出しになりますが、

この状態はとても感染しやすい無防備な状態ともいえます。

ナノシールはその表面に

「耐酸性ナノ粒子層」

というかっこいい名前の膜を形成し、

無防備な形成面をコーティングします。

また、再石灰化を促進する効果もあるので、

上記した茶色い部分の再石灰化も促進されます。

 

慢性的な炎症を起こし、腫れて出血していた歯肉も、

止血処置を施し、型取りしやすい状態にしてます。 

 

それでは型取り(印象採得)と噛み合わせをとっていきます。

春日部ラビット歯科ではセラミック治療では特に

口腔内スキャナーを使用した「光学印象」を行います。

 

口腔内スキャナーの『Aoralscan3 shining3D』
全体をスキャンで院内技工士さんと確認
下アゴだけの状態で確認
治療部位の確認
噛み合わせの確認
セラミックの挿入方向の確認

 

いっきに光学印象で確認してることの写真あげました。

今までの粘土のような材料を使った型取りと比べ、

その精度は圧倒的に改善されました。

患者さんの負担も、

作り手である歯科技工士さんの手間も大幅に軽減されています。

 

模型等は作らず、このデータを使って作成していきます。

 

これ執筆時、

まだ完成していませんので、完成次第またアップいたします。

 

今回の症例のおさらいです。 

 

診断:下顎右側第二大臼歯のメタルインレー二次カリエス

治療期間:20日(印象からセラミックセットまで)

通院回数:2回

料金:セラミックインレー(単色)44,000円(税込)

上記治療の主なリスクや副作用に特記事項はありません。

 

 

さて、

このケース、患者さん本人には痛みや沁みなどの症状はありませんでした。

 

「虫歯を治した場所なのに、また虫歯になるの?」

「痛くなかったのに本当に虫歯?」

初診での検査結果説明で、患者さんからこのような声を多く聞きます。

 

なります。

 

むしろ、保険診療で使用される金属やプラスチックの詰め物は

本物の歯よりも汚れがつきやすく、汚れを取りづらい性質を持っています。

当然虫歯の再発をしますよね。

隣あっている健康な歯も虫歯にしてしまうリスクが上がります。

  

また、金属の詰め物はお口の中の環境で大きく変化しています。

暖かい物と冷たい物が口の中に入ると、

金属は「膨張」と「収縮」を繰り返します。

その動きがスキマを作り、菌が入り込んでいきます。

 

更には、金属は自分の歯のように

 

擦り減ってくれません。

 

ここ結構重要で、

本来、歯は自然なすり減り(咬耗)があることで、

独自の噛み合わせを維持していきます。

 

金属は減らないけど、自分の歯はすり減る。

当然段差が生まれ、スキマも生まれます。

 

銀の詰め物の下、

要注意です。

 

 

 余談

初回なので張り切りすぎた。

疲れた。

次回からはもっと写真使って簡潔にしよう。

このブログが長く続きますように。



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